桃とわたし
じゃあさ、結局のところそういうことだよね
さばさばした口調とは裏腹に
小刻みにリズムを刻む指先
なりたい自分と
なれない自分の狭間
些細なことにイライラして
小さな自分にため息をつく
そんなことよりも
世界はもっと広いのだから
空を見上げたらいいのに
*
冷蔵庫で冷やしておいた
とっておきの桃
皮を剥いてかぶりつくと
歯の間に桃の繊維が詰まるのも気にならないくらい
甘い汁が口の中いっぱいになって
思わず笑みがこぼれる
そういうのだよ
そういうの
そういうの考えていよう
そういうのやっていよう
幸せで上書きして
もやもやを押し込めよう
押し込めて
押し込めて
どうなるんだろう
なんて
考えないでおこう